知財二等兵の手記

知財業界に入ってそこそこ経過した二等兵のブログです。

DOAのMODに関する著作権侵害について

 1. 事件の概要

 コーエーの発表(*1)を見ると、被疑者は「キャラクターの被服を削除する等の改変を加えた内容を DVD に録画して、オークションサイトで販売」していたそうだ。

 

 対象となった動画は、DOAシリーズのゲーム内のシーンをMODで改変したものらしい。MODとは、ユーザによって作成された改造データのことを指し、DOAシリーズのみならず、マインクラフトやバイオハザード等のその他の著名なゲームでも用いられている。(DOAシリーズの場合は、特にいかがわしい目的で利用されている…。)

 

2.感想

 なんとも大胆不敵な被疑者である。そもそもMODの使用自体が著作権(同一性保持権)の侵害に当たる可能性は極めて高く、今のところメーカーからは見逃してもらっている、というのが現状だろう。

 

 私の知る限り、逮捕や書類送検された例は少なく(というか知らない)、ユーザへの警告どまりだったのだが、書類送検されたのには二つの大きな要因があると思う。

 

 まず、第1の要因は営利目的であるということ。この点は改めて指摘するまでも無いだろうが、多くのメーカは営利目的か私的使用かという点を判断基準にしているように思う。ユーザが個人的に楽しむ分には、あまり口出しをしないというのが通例だ。

 

 第2に、これは特に推測だが、DVDを媒体にした点が大きいだろう。こういった電子データによる著作権侵害を訴えようとした場合は侵害者の特定が困難である、ということが大きな壁になる。しかし、今回の事件においてはDVDが販売されていたという点から、侵害者の居住所が簡単に特定できたのではないだろうか。(こんな侵害者ばかりなら楽なのに。)

  

以上である。まあ、いちユーザ達がこっそり楽しむ分には書類送検までされないだろう。

 

第3 おまけ

 コーエーの発表の中で、上記の被疑者の行為が「著作権(複製権)の侵害」に当たると述べられている一方で、MODの使用に対する同一性保持権の侵害には言及されていない。もし、MODについても言及されていたら、MODの違法性が明確になっていただろう。

 深読みかもしれないが、コーエーは、こっそり楽しむユーザを見逃す為にMODと同一性保持権については述べず、複製権についてのみ言及したのかもしれない…。

 

 

 

 

 

 

 

*1 https://www.koeitecmo.co.jp/news/docs/news_20210106.pdf